Introduction$nbsp;&$nbsp;Story

人生のどん底に堕ちた、ブルーすなわち憂鬱なジャスミン。再び夢のようなセレブリティ生活に返り咲くことができるのだろうか?

「名前を変えたの、ジャスミンに。ジャネットなんて平凡だもの。」

 サンフランシスコの空港に美しくエレガントな女性が降り立った。彼女は、かつてニューヨーク・セレブリティ界の花と謳われたジャスミン(ケイト・ブランシェット)。しかし、今や裕福でハンサムな実業家のハル(アレック・ボールドウィン)との結婚生活も資産もすべて失い、自尊心だけがその身を保たせていた。
 庶民的なシングルマザーである妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)の質素なアパートに身を寄せたジャスミンは、華やかな表舞台への返り咲きを図るものの、過去の栄華を忘れられず、不慣れな仕事と勉強に疲れ果て、精神のバランスを崩してしまう。
 やがて何もかもに行き詰まった時、理想的なエリート外交官の独身男性ドワイト(ピーター・サースガード)とめぐり会ったジャスミンは、彼こそが再び上流階級にすくい上げてくれる存在だと思い込む。
 名曲「ブルームーン」のメロディに乗せて描かれる、あまりにも残酷で切ない、ジャスミンの運命とは───。

映画史に燦然と輝くヒロインに、
ウディ・アレン創造の新たなる主人公“ジャスミン”が名を連ねた!

 『ミッドナイト・イン・パリ』『ローマでアモーレ』などのロマンティック・コメディ路線から一転、ウディ・アレン監督がシリアスな作風にギアチェンジした本作は、ひとりの女性の転落人生とその複雑な胸の内をあぶり出す人間ドラマだ。虚栄心とプライドで塗り固められたヒロインの華麗なる“過去”と、痛々しすぎるほど悲惨な“現在”とを対比させながら、セレブが身も心も破綻していく様を容赦なく映し出す。78歳にして新たな絶頂期をひた走るアレンが創造した主人公は、現代性と真実味を帯び、「女性映画を撮らせたらアレンは随一(タイム誌)」との評に誰もが納得するだろう。これまで3度の受賞を誇るアカデミー脚本賞に通算16本目のノミネートを数えた本作でも“話術の達人”ぶりを大いに発揮している。

 主人公にはケイト・ブランシェット。虚言と現実逃避を繰り返し、ひたすら堕ちていくジャスミンのはかなさと哀しみを体現した、鬼気迫る演技は『欲望という名の電車』『サンセット大通り』といった伝説的なヒロインのそれに比肩すると言えよう。オスカー大本命と目される所以である。